異端審問 (講談社現代新書)



異端審問 (講談社現代新書)
異端審問 (講談社現代新書)

ジャンル:歴史,日本史,西洋史,世界史
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異端審問が完成されるまで?南フランスにおける歴史

 本書の冒頭で、1415年7月6日、宗教改革の先駆者ボヘミアのフスが火刑に処せられるまでの様子を、当時の資料より再現します。異端審問とはいかなるものであったかを強く印象付けるものです。
 異端審問は、12世紀に端を発するカタリ派への弾圧の過程で生まれます。正式な異端審問の始まりは、1231年あるいは1333年の法王勅令によると考えられていますが、12世紀にはすでに異端審問と呼べるものが始まっています。こうして生まれた異端審問は、13世紀後半以降、南フランスで制度化が進展し、14世紀始めに異端審問官「ベルナール・ギー」の登場で一定の完成を見ることになります。その後異端審問はイベリア半島に舞台を移し、改宗ユダヤ人や元イスラム教徒への苛烈な弾圧となって行きます。
 本書は主に、13世紀から、ベルナール・ギーの登場する14世紀まで、南フランスでの異端審問の展開に多くの資料を参照しながら、スポットを当てていきます。当初は必ずしも統一されたものではなかった異端審問が、やがて文字通りに「マニュアル化」され(その代表がギーの「異端審問の実務(プラクティカ)」)、異端審問官たちによって統一的で苛烈な裁判が執行されるようになって行きます。
 苛烈な処罰の一方で、審問の手続きは、滑稽なまでに律儀で官僚的なものでもありました。「動物裁判」を大真面目に執行したのと同様、中世人は手続きを重んずる心性があったようです。このことは、後々、法の前での平等、法治主義をヨーロッパが生み出すことと関係があるのかもしれません。
 本書は、最後にイベリア半島での異端審問を概観して終わります。一般のイメージでは「異端審問=スペイン」というイメージが強いと思いますが、本書はその前史として異端審問が制度化されて行くプロセスを主題としています。
私刑から制度へ

 1930年生まれのフランス中世史研究者が、1996年に刊行した本。中世カトリック教会は、西欧唯一の公認教会として、公式に定められた教義から逸脱したり教会制度を否認する者=異端者を矯正・排除する権限を持つこと(内面の支配)を主張しており、その責任と権限は司教に属するとされた。異端審問とは、この司教の権限の外側に、あるいはそれと重ねて設けられた、教皇直属の特別の機関ないし制度である。12世紀頃の大規模な異端の発生を背景にして、とりわけ南仏でのカタリ派の武力鎮圧過程で、職権による審問としての異端審問は登場した。その際、まず先頭に立ったのはドミニコ会士で、彼らは熱意に燃え、生者・死者を問わず、既存の秩序を顧慮せずに厳しい処罰を行い、人々の反発を買った。初期にはしばしば私刑まがいの異端狩りも行われたが、教皇・教会会議による教義の整備や、異端審問官らによる実務の記録を経て、徐々にそれらは枠にはめられて制度化され、尋問や拷問の方法が確立されていく。著者は14世紀の審問官ベルナール・ギーらの著作に注目し、審問される対象とその実態、審議の過程、処罰の在り方(「世俗の腕」による火刑、投獄、恥辱刑・巡礼等)等を紹介する。異端審問は政治的条件によって、現実には多様な形態をとったが、多くのイスラム・ユダヤの異教徒と直面していたスペインで特異な発展を遂げ、近世には住民の身元証明や風紀統制にも関与し、19世紀まで存続した。ただし本書の主要な対象は、主として12?14世紀のフランスにおける異端審問制度の整備にある。異端審問は中世西欧の暗黒面を象徴するものの一つであろうが、正直言って、本書を読んでも、この戦慄すべき制度がなぜ定着したか、の原因は見えにくい。

初心者に最適

 とてもわかりやすかった。全体的な視点で見ているから偏りがないし。それだけに掘り下げが足りないと言えば言えますが、正直言って異端審問を掘り下げても気持ちのいい話は出てきませんし。異端審問がどういうものだったかの概括を知るためだったらこれ1冊で充分。



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